相続,遺言

渡辺英一

 電話 011−372−2546


1 相続とは


 相続は人の死亡を原因として開始します。つまり被相続人が死亡すると,その瞬間に残された相続人について相続が開始され,相続人による遺産の共有が始まることになります。
 さらに相続とは,故人の生前の地位を受け継ぐことです。被相続人が持っていた家や土地,現金などのほか,借金も含めて引き継ぐことになります。相続の開始後3か月以内に特に申し立てをしなければ,相続を自動的に承認したものとみなされます。

  期限が定められている事項

○ 相続放棄・限定承認     3か月以内に申し立てる必要があります。
○ 準確定申告書提出      4か月以内
○ 相続税申告書提出     10か月以内
○ 延納・物納申請手続    10か月以内      

2 遺言書の種類

 遺言は自分の財産に対する最終の意思表示です。その人が死んだ後で初めて効力を生じさせる制度です。
 そして遺言作成は法律行為ですから,作成者が作成時に意思能力を持っていることが必要とされます。遺言能力は遺言内容を理解し,その結果を弁識しうるに 足る能力で民法では15歳以上になればあるとされています。そこでしばしば問題になるのは,判断能力が低下した高齢者の遺言の場合です。

 ところで日本の現在の相続法は,法定相続よりもむしろ被相続人の具体的な意思表示である遺言が優先され,遺言がない場合には法定相続になります。
 また一定の法定相続人には遺留分が保障されています。この遺留分権利者が自己の権利を主張した場合は,結果として被相続人の遺言の自由は制限されることがあります。

  (1) 自筆証書遺言

 @ 遺言書全部の文章を自分で手書きする。
 A 日付がある。
 B 署名押印がある。

これらの三条件を備えていればよいのです。なお家庭裁判所の検認(※)は必要です。
 
(※) 検認とは家庭裁判所が遺言書の存在および内容を確認するため遺言書を調査する手続。(広辞苑より)

  (2) 公正証書遺言  公証人に作成・保管してもらう最も安全確実な方法であり,家裁の検認も不要です。

  (3) 秘密証書遺言  遺言の存在は秘密ではありませんが,その内容を本人以外は知らない遺言です。なお家裁の検認は必要です。

  (4) 遺言書の開封  公正証書遺言以外の遺言書は,被相続人が亡くなって相続が開始されたならば,家庭裁判所に提出して検認を受けなければなりません。 封印された遺言書を裁判所で相続人立会いのもとで開封し,偽造された遺言書でないことの確認をします。

3 遺言書がない場合

 遺言書がない場合は法定相続人(民法で規定された相続人)が,民法で定められた順位と割合で相続します。

4 法定相続人の順位

 相続人の順位とそれぞれの持分は以下のようになっており,もし先順位の相続人がいれば,後順位の相続人は相続人にはなれません。@が成立すればA以下はありえず,Aが成立すればBのケースはありません。
 なお法律上の配偶者は常に相続人になります。

  @ 第1順位 配偶者(1/2)+子(1/2)
  A 第2順位 配偶者(2/3)+直系尊属(1/3)
  B 第3順位 配偶者(3/4)+兄弟姉妹(1/4)

  また相続人全員が合意をすれば,法定相続分にはかかわりなく自由な割合で相続財産の分配をすることができます。

5 遺留分とは

 遺言によっても減らすことができない最低限の相続分のことです。
 遺留分を有する相続人は,@配偶者,A子,B直系尊属のことです。
 なお亡くなった人の兄弟姉妹には遺留分はありません。また子の代襲相続人は被代襲者である子と同じ遺留分を持っています。
 ただし遺留分を侵害された人は,相続の開始及び遺留分侵害を知ったときから1年以内に,家庭裁判所に遺留分減殺請求をしなければ時効によりその権利が消滅します。せっかく権利を持っていても自分で主張しなければ,その権利は消滅してしまいます。
 また相続開始から10年経過したときにも消滅します。

6 遺産分割協議書

 遺言がない場合は相続人全員で,遺産分割方法を決めなければなりません。
 遺産分割は,共同相続における遺産の共有関係を解消し,遺産を構成する個々の財産を各相続人に分配する作業です。
 民法では遺産分割は,遺産に属する物又は権利の種類及び性質,各相続人の年齢,職業,心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して行わなければならないとしています。
 なお遺産分割の当事者全員が合意するならば,法定相続分や指定相続分に合致しない分割,被相続人が指定する遺産分割方法に当てはまらない分割も可能となっています。
 そしてこの協議で相続人すべての意思統一が図られると,それをもとに遺産分割協議書を作成します。不動産の登記手続,預貯金の名義変更,相続税の申告の際等に遺産分割協議書が必要となります。これには相続人全員の署名押印と,印鑑登録証明書の添付が必要です。
 
7 相続放棄  

 遺産相続を放棄しようとする相続人は被相続人の死後,自己のために相続が開始したことを知ったときから3月以内に,家庭裁判所にその旨の申述をしなければなりません。
 これは無条件に相続財産を全部放棄することです。その相続に関しては初めから相続人にならなかったものとして扱われます。農家や自営業者が後継ぎに単独相続させる,債務超過の相続を嫌ってなどが原因としてあります。
 なお一度相続を放棄するともう撤回は認められません。

8 限定承認

 相続した財産の範囲内で被相続人の借金を清算して,残ったプラス財産の限度で責任を負う制度です。ですから限定承認者は相続財産の限度を越えて弁済する必要はありません。
 なお,相続人が複数いる場合は,全員が足並みを揃えて共同で行なうことが必要です。

9 相続人の廃除

 相続人の廃除は被相続人に対して虐待をし,もしくは重大な侮辱を加えたとき。その他の著しい非行があったときに,被相続人の意思に基づいてその相続人としての権利を失わせる制度です。なお廃除の対象となる相続人は,遺留分を有する相続人に限られます。
 その方法としては被相続人が生前,家庭裁判所に申し立てる場合と,遺言内容にしたがって遺言執行者が家庭裁判所に申し立てる場合の,二通りがあります。
 ただし廃除された相続人に子がいる場合は,その子が親に代わって相続できます。

10 相続税の申告と納税

 被相続人が相続や遺贈によって財産を得た場合に,相続税がかかる場合があります。  

  相続税の基礎控除額算出方法=5千万円+1千万円×法定相続人の数

 遺産総額が上の数式で計算して,基礎控除額以下であれば相続税の申告書を提出する必要はありませんし,相続税を納める必要もありません。
 現実の相続の9割以上は相続税がかかりません。

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